本当に暑かった2018年の日本の夏。こんなに暑いのに、2年後のオリンピックは大丈夫なの⁈という懸念の声があちこちから上がっています。
そこで政府は、暑さ対策としてサマータイムの導入を検討しています。
一体サマータイムとは何でしょう?導入されれば、私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか?
反対派は、どのような理由で反対しているのでしょうか?
その他、政府のサマータイム導入案、過去に実は日本でもサマータイムが実施されていたことや、有識者や一般の人たちはサマータイムについてどのように思っているのかご紹介します。
サマータイムとは?
日本人の私たちにはあまり馴染みがありませんが、「サマータイム」とは、
1年のうち夏を中心とする時期に太陽が出ている時間帯を有効に利用する目的で、標準時を1時間進める制度またはその進められた時刻のこと。
アメリカなどでは、「デイライト・セービング・タイム」(日光節約時間)と呼ばれています。
現在サマータイムを実施している国は、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、ニュージーランド、そしてヨーロッパなど各国です。(※一部の地域を除いて実施の国もあり)
また、導入はしたけれど結局廃止したという国はかなりたくさんあります。
政府・与党のサマータイム導入案とは
政府は、オリンピック・パラリンピックの酷暑対策として、夏の時間を1〜2時間繰り上げることを検討しているということです。朝の涼しいうちに始めようということですね。
政府・与党は秋の臨時国会への議員立法提出を目指しており、もし導入されるとしたら2019年、2020年の限定導入になる可能性が高いと報道されました。
が、その後、「秋の臨時国会で法案ができるとか、来年から施行できるということはありえない」と自民党の遠藤元オリンピック・パラリンピック担当大臣が述べたようです。ということは、導入されるとしたら、2020年にいきなり導入でそのままオリンピック実施ということになってしまうのでしょうか?
また、サマータイムを導入している国はたくさんありますが、通常1時間で、2時間も繰り上げている例はないようです。いきなり2時間繰り上がるのは、ちょっとキツイ気がしますよね…。
実は日本でもサマータイムが実施されていた!
私たち日本人には全く縁がないと思っていたサマータイムですが、実は以前日本でも導入されたことがあったのです!
時は第二次世界大戦後のGHQ占領下。1948年から1951年にかけて、5月〜9月の間はサマータイムが実施されていました。(この時、「サンマータイム」と呼ばれていました。)
1949年4月3日に実施されたサマータイム(毎日新聞社「昭和史 第13巻」より)
しかし、残業増加や寝不足の原因になり、むしろ効率が落ちていると人々は感じて反対の声が上がり、1951年に廃止されました。
この時、人々は日本でのサマータイム導入はデメリットの方が大きいと確認し、結局この政策は失敗だったということを認識したのでした。
その後も、省エネルギーなどを目的として、何度もサマータイムの導入が検討されてきましたが、結局採用されませんでした。メリットよりもデメリットの方が大きいと考えられたからです。
ただ、日本の地方自治体や会社などで独自のサマータイムを導入しているところはあります。
サマータイムのメリット
実際にサマータイムを実施している国や会社などでは、資源節約という本来の目的以外に、以下のようなメリットを感じていたり、社会的効果も期待できます。
・日本の夏の日の出は早いので、朝の明るい時間を有効に使える。
・朝の方が仕事効率が上がるので、残業が減る。
・帰る時間がまだ明るいので、安全。
・子供が外で遊ぶ時間が長くなるなど、戸外での活動が増える。
・強盗などの犯罪発生率が下がる。(顔を見られる明るい時間帯が長くなるため)
・就業時間も明るいため、アフターファイブの活動が盛んになり、経済効果が期待できる。
・帰宅時間が早いので、家族で過ごす時間が長くなる。
もちろん個人によって感じるメリットは違ったり、人によっては全く逆のことを感じるかもしれませんが、5時終了の仕事なら、実質4時終了になる!というのは考えれば確かに魅力的ですよね。
まだまだ活動できる時間がずいぶんあるように感じ、ショッピング、習い事、友達と会うなど、好きなことがいろいろできるでしょう。
反対派の意見(サマータイムのデメリット)
今までサマータイムを導入したものの、結局廃止したという国や地域がとても多いことをみると、デメリットもやはり大きいのでしょう。
まず大きいのは、健康被害です。
やはりいきなり時計を1時間繰り上げるのは、かなり体に負担がかかるものです。「1週間ぐらいで慣れる」という人もいますが、睡眠障害などに悩む人などにとっては、寝不足による疲労が深刻になるでしょう。
寝不足によって疲労感を感じ、作業効率が落ちたり注意散漫になると感じる人も多いようです。そのため、交通事故件数が増えたり、テストの点数が下がったり、心臓発作の発生率を高めるとする研究もあります。
また、サマータイムは緯度が高く夏の日照時間が長い国に合うもので、南北に長く日の出と日の入りに大きな差が出る日本には合わないという意見もあります。
そして、そもそも省エネルギーのためにやるのに、日本は蒸し暑く帰宅後も冷房を使うので意味がない、と考える人もいます。
そもそも「暑さ対策」が主目的のサマータイム導入案なので、日照時間だけではなく気温や湿度も考慮に入れる必要がありますが、日本の夏の気候では、サマータイムを導入してもあまり意味がないと考える人は多いようです。
また、せっかく早く仕事が終わるのに、会社や業種によっては、その分残業が増えるところもあるようです。
そして、一番大きな問題は、サマータイムに切り替えることによって起こる混乱や、それに必要な膨大なコスト。
今やすべてのものがコンピューターによって管理されていますが、すべてのシステムや端末でサマータイムへの切り替えがきちんと行われるためには膨大なコストがかかります。
サポートされていないシステムでサマータイムに切り替えられないと、他のシステムとの整合性が取れず、混乱が起こります。
このように、数々のデメリットが研究によって明らかになったり、報告されています。
まとめると、
・睡眠障害、寝不足による疲労や注意散漫などの健康被害。
・サマータイムは緯度が高い国に合うもので、南北に長い日本には合わない。
・日本の夏の気候では省エネにならず、暑さ対策としてもあまり意味がない。
・かえって残業が増える。
・コンピューターやシステムをサマータイムに切り替えることに伴う混乱や膨大なコスト。
などということです。
サマータイムについては多くの専門家や有識者が意見を述べていますが、「反対」ではなく「サマータイムの導入は不可能」と言い切っている人もいます。
ジャーナリストの本田雅一さん→日本でサマータイムが絶対に導入されない理由。2020年東京オリンピック問題
立命館大学情報理工学部 上原哲太郎さん→2020年に合わせたサマータイム実施は不可能である
また、2018年8月29日付の食品新聞は、新日本スーパーマーケット協会と日本加工食品卸協会(日食協)は、農林水産省に提出した影響調査報告で実施取りやめを求めた、と報道しています。
スーパーやコンビニでは、時間単位で食品の管理をしているので、システムや生鮮食品管理への支障が出る恐れがあるからです。
他にも、ITの研究者たちは、システム改修には最低でも4年は必要とし、あと2年で東京オリンピックに間に合わせることは難しいという見解を出しています。もし強行すれば、システムに問題が起こり大事故が起きる可能性もあるとの懸念を示しています。
ぶっちゃけ、みんなサマータイムについてどう思ってるの?
サマータイムについて人々がどう思っているかに関していくつかアンケートが行われました。
NHKオンラインが2005年に行った調査では、反対派が賛成派をわずかに上回りました。
同じくNHKオンラインが2018年8月に再度調査をしたところ、「賛成」が51%、「反対」が12%、「どちらともいえない」が29%という結果でした。
また、朝日新聞が2018年8月に実施した調査では、「賛成」が53%、「反対」が32%、「その他・答えない」が15%という結果だったそうです。
2018年の調査では、少し賛成派が多いようですね。
ただ、違う媒体では全く違う結果も出ています。
ある人が、ツイッターでアンケートをしています。
日本でも導入が検討されているサマータイムに対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
これが世論じゃ!と言えるぐらい膨大な投票数を獲得したいです。ご協力宜しくお願い致します。#拡散希望
サマータイムに
— Testosterone (@badassceo) 2018年8月23日
ツイッターという限定された媒体ですが、圧倒的に反対派が多いようですね。
その他、ツイッターからいろんな意見を拾ってみました。
サマータイムの問題は国民全員が「1週間くらい2時間の睡眠不足になる」ということです。そして、日本はすでに世界1、2を争う睡眠不足国家です。睡眠医学の専門家として警告します。事故が増え、健康に害が出ます。「単に2時間早く起きる」などという安易な捉え方をする人は不勉強すぎます。
— 河合 真 (@EarlyQuarry) 2018年8月23日
サマータイム導入推進派のおじいちゃん達は、時計の針を2時間進めたら、サマータイムになると思っている。鉄道でも、ATMでも、送金でも、全部、システムの作り替えをする必要があり、失敗したら、鉄道が止まったり、メガバンクのATMが止まることをご理解頂けていない。
— 林雄介・新刊(宗教で得する人・損する人) (@yukehaya) 2018年8月21日
サマータイムある所に住んで20年ですが、反対です。デメリットを考えるとメリットは皆無に近い。毎回周囲は混乱しています。変更日の会議時間も再確認が必要だし、当日海外から客が来る場合は尚更。生産性も下がります。時間に正確な日本人には向いてません。
— Andy (@Andy77770222111) 2018年8月23日
ツイッターをみると、反対意見しか見当たらない、と言っていいほど反対派ばかりです。まあ、賛成の人は、ことさら声を張り上げて「賛成!」という必要がないのかもしれませんが…。
NHKのサマータイム導入についての世論調査。
この調査結果が信じられない。
私を含めて、周りに賛成の人誰もいないんだけど。#サマータイム pic.twitter.com/SM9Izel9Lb— ゆっち (@yukmk1) 2018年8月21日
もしかして結果が操作されている…?なんて思ってしまいます。この結果について疑問を呈する声が上がっているようです。
まとめ
サマータイムの実施にはメリットもデメリットもありますが、実は日本にはサマータイムを導入し、廃止された過去がありました。
もし2020年の導入でいきなりオリンピック実施になると、混乱は避けられないように思えます。
大方の予想では、実施には至らないのではないかということのようですが、これから時間をかけて慎重に議論が進められるということです。