ますます英語教育に対する意識が高まっているなか、「フォニックス」にも注目が集まっています。
「フォニックス」とは一体何?やっておいたほうがいいの?と気になっている人もいるでしょう。
私は英語教師として、子供や大人にフォニックスを教えてきました。そして、自分の子供がある程度の年齢になった時、自分で子供にフォニックスを教えました。
その経験を踏まえ、フォニックスとはどのようなものか?そして、その効果はどのようなものか?ということをお話ししたいと思います。
フォニックスとは?
日本語と英語の違い
まず、フォニックスとは何かを知らない人のために説明します。
簡単にいうと、フォニックスとは「英語の文字と発音をつなぐルール」です。
例を挙げましょう。
まず、日本語の読み書きを習う時、五十音から始めますよね。
あ い う え お |
この5文字を習ったとします。
次に、下記の言葉を読んでみてください。
あい |
いえ |
うえ |
読めますよね。
それでは次に、英語を見てみましょう。
a b c d e f g |
この7文字を「エイ・ビー・スィー・ディー・イー・エフ・ジー」と習いました。(英語の読みはカタカナで正確に表せませんが、便宜上カタカナで表記します。)
次に、この単語を読んでみてください。
bed |
はい、もう習ったから分かりますよ…「ビー・イー・ディー」…ではありませんよね⁈
言われてみれば確かにヘン。
なんで⁈と不思議に思った経験はありますか?
それとも、そういうものだとして疑問に思ったこともありませんか?
実は、ここで「なんで⁈」とつまずいてしまう子供も少なくないのです。
文字には「名前」と「音」がある
文字には、「名前」と「音」があります。
日本語は、一部の例外を除いては、「名前」と「音」が一致しているので、五十音を習ったらすぐにひらがなの単語が読めるのです。
一方、英語は「名前」と「音」が一致していません。
b の名前は「ビー」、音は「ブッ」
e の名前は「イー」、音は「エ」
d の名前は「ディー」、音は「ドゥッ」
というように違うのです。
これを、「ブッ」+「エ」+「ドゥッ」とつなげて読むことによって、「ベッドゥ」という音になるのです。
それなのに、日本の英語教育では、「名前」を勉強した後、「音」を勉強せずにいきなり単語を読むようなカリキュラムになっているので、混乱する子供がいるのです。
フォニックスのルール
このように、「 "b" は『ブッ』と読む」というような一文字単位のルールから始まり、フォニックスには様々なルールがあります。
car |
この単語をフォニックス的に分解すると、c + ar になります。
"c" は「クッ」、"ar" は舌を丸めながら「ア〜」という音。
「クッ」+「ア〜」がつながって、「カー」という音になります。
このarのように、二文字単位で塊となってルールを作るものがあります。
また、三文字単位で塊になっているものもあります。
edge |
これは、フォニックス的分解をすると、e + dge です。
"e" は「エ」、"dge" は「ジ」という音を持っているので、つなげると「エッジ」という音になります。
このように、フォニックスの一文字単位、二文字単位、三文字単位、その他のルールなどを学ぶことによって、「知らない単語でもスペルをみれば読める、聞けばスペルが推測できる」という力がつくのです。
つまり、フォニックスを一旦身につければ、日本人がひらがなが読めるのと同じくらい当たり前に英単語が読めるようになるというわけです。
フォニックスは万能?
それってすごいじゃない?と思うかもしれませんが、実はこのフォニックスのルールが適応されるのは、英単語全体の4分の3ほどだと言われています。
残りの4分の1は、サイトワード(sight word)と言って、不規則なので覚えるしかない単語。しかも、日常的によく使う単語ほどサイトワードだったりするのです。
それでも、フォニックスを身につけていれば、4分の3は当たり前にスペルが分かるから覚える必要がなく、4分の1だけ暗記すればいい、ということになります。がむしゃらに100%の単語のスペルを全部覚えるよりは確実に楽です。
それから、時々勘違いをする方がいるのですが、フォニックスを身につけたからといって、英会話がぺらぺらになったりするようなものではありません。
先ほど述べたように、フォニックスを学ぶというのは、英単語のスペルと音をつなぐルールが身につく、ということです。
これは単語の話なので、文法や英会話とは全く関係ありません。
フォニックスは、英語学習全体からみると、小さな通過点なのです。フォニックスのルールを身につけた子は、当たり前のように単語が読めるようになります。そして、いつしかフォニックスなど学んだことなどすっかり忘れてしまうほど、当たり前のことになるのです。
実は、頭のいい子は、フォニックスを学んだことがなくても、いろいろな単語を学んでいくうちに自分でスペルと発音の法則に気づき、頭の中で整理して読めるようになっていったりします。
私たち大人の世代は、学校でフォニックスを習ったことはまずないと思いますが、ローマ字を手がかりにして、なんとなく頭の中でルールを整理して、英語がだいたい読めるようになっているのです。
では、フォニックスを学ぶ意味は?
そう聞くと、「じゃあ、子供の時にわざわざフォニックスをやらなくても、最終的にはできるようになるんでしょ?じゃあやらなくてもいいじゃん」と思うかもしれません。
でも、やはりやったほうがいいと私は思います。理由は2つあります。
①英語が得意で好きになる。
フォニックスは英語の初期段階で学ぶべきものです。ここでしっかり身につけて、例えばスペルテストがよくできるというだけでも、「私は英語が得意なのかも」と思い、好きになっていくという好循環が生まれます。
逆に、はじめにつまづいてしまうと苦手意識を引きずってしまうかもしれません。
②発音がよくなる。
先ほど、「フォニックスを習ったことがない人でも、ローマ字を手がかりに頭の中でルールを整理する」と書きましたが、実はこれがなかなか厄介なのです。
というのは、例えば「a」をローマ字のように日本語発音の「ア」と読んでしまい、正しい音がどんな音かさえ分からない、そしていつまでもたっても日本語的発音から抜け出せない、ということになってしまうのです。
でも、はじめにきちんとフォニックスを学んでおくと、正しい音に近づけようと努力して発音しているうちに、だんだん口まわりの筋肉が発達してきて、楽に正しい発音が出せるようになっていくのです。
正しい発音にこだわる必要がある?
「正しい発音」ということに関しては、「ネイティブみたいな綺麗な発音じゃなくても通じりゃいいんだよ」という意見があります。
確かに、ネイティブと言っても国や地域によって発音やアクセント(なまり)は様々ですし、ノンネイティブが多少まずい発音をしても通じることもあります。
ただ、これまでの経験を通して確実に断言できますが、「全く正しい発音を習ったことがない人が適当に日本語アクセントで話す英語と、正しい発音を習ってそれに近づけようと努力しているけれどまだうまく発音できない人が話す英語は、通じやすさに雲泥の差がある」ということです。
世の中には、外国語なまりに慣れている人と、そうでない人がいます。そうでない人は、「Japan」「fan」のようなごく簡単な単語でも、日本人が正しい発音をしていないがゆえに、理解できなかったという例をいくつも見てきました。
私が子供にフォニックスを教えた結果どうなったか?
フォニックスの効果
はじめに書いたように、私は小・中学生、大人にフォニックスを教えてきました。
その結果、上に挙げた「知らない単語でもスペルをみれば読める、聞けばスペルが推測できる」、そして「発音がよくなることで通じやすくなる」という以外にも、次のような効果を感じました。
・聞き取りやすくなる(リスニングの向上)
・自信がつくことによって声が大きくなる(そして通じやすくなる)
フォニックスを勉強していると(うちの子どもの場合)
私はうちの子供たちが幼稚園、確か3〜4歳の頃にフォニックスを教えました。
通っていたのは英語の幼稚園だったので、簡単な文を話したりすることはできた頃です。(フォニックス導入の時期はここでは詳しく論じませんが、このようにある程度簡単な単語や文が分かるようになった頃が適しています。)
とは言っても、まだ小さいので、ゲームのようにして楽しく遊んでいたという感じです。
それでも、少しずつレベルを上げていって、フォニックスで教えるべきことはほぼ全て教えました。
それ以来、うちの子供達は、小学校に上がってからも英単語のスペルを覚えることに時間を費やしたことがありません。
単語テストがある時、ざっとリストを見て、「覚えなきゃいけないのは、2番と6番だな。」などと言います。つまり、不規則なスペルの単語を見つけ、それを覚えるのです。それ以外の単語は、彼らにとって当たり前すぎて覚えるまでもないのです。
不規則なスペルの単語も、数秒じっと見て、「覚えた。」これで終わりです。
なのに、単語テストはいつもほぼ満点だったし、校内スペリングビー(スペルを言うコンテスト)では、いつも上位入賞していました。
フォニックスをしていないと(友達の子供の場合)
ある時、友達の子供の話を聞いてびっくりしたことがあります。
彼女の子供は、一切フォニックスを習っていませんでした。
ある日、学校の単語テストで1から10の数字のスペルをやるので覚えていかなければならない、ということがありました。
友達の子供は、
「one one one one one....
two two two two two...」
と紙に何度も書いて一生懸命覚えていたそうです。ふと友達が覗き込むと、一生懸命「six」の代わりに「s●x」と練習していたのだとか。
友達は笑っていたし、まあ話としては面白いので私も笑ってしまいましたが、角度を変えて友達の子供の立場から見てみると、全く面白くない話じゃないかと思うのです…。
だって覚えるために一体どれだけの時間を使ったのでしょう。しかも一生懸命書いているのが、間違っているなんて!
しかも、友達のうちは国際結婚でマルチリンガルな環境ですが、家族の共通語は英語で、子供はネイティブみたいにペラペラと話すんですよ。
この子が間違っていたことは、基礎の基礎、フォニックスを学べばまず最初にやることだし、普段話している言葉と結びつけてごく簡単に覚えられたことだと思うのです。
日本人の中にも英単語テストの前に紙に何度も書いてスペルを覚える人がいると思いますが、フォニックスを身につければそんな無駄な時間を過ごさなくて済みます。
フォニックスを学んだ10年後
私の子供は現在中学生と小学校高学年ですが、未だに英単語のスペルでは苦労したことがありません。もちろん全く間違えないというわけではありませんが(はじめに言ったように、ルール通りでない単語もたくさんあるのです)、少なくとも単語のスペルを覚えることに時間を費やすことはありません。
今となっては私が教えた内容を全く覚えていないようですが、忘れてしまうほど当たり前に身についてしまったということですね。
まとめ
フォニックスとは「英語の文字と発音をつなぐルール」です。
フォニックスをやると、以下のような効果が期待できます。
●知らない単語でもスペルをみれば読める、聞けばスペルが推測できる
●発音がよくなることで通じやすくなる
●聞き取りやすくなる(リスニングの向上)
●自信がつくことによって声が大きくなる(そして通じやすくなる)
フォニックスをマスターしたことで、私の子供達は英単語のスペルを覚えることに時間を費やす必要がなく、スペリングはいつも得意でした。
日本人の子供も、英語の初期段階でフォニックスを学ぶことによって、他の子より英語が得意だと自信がつく→英語が好きになる、という好循環が生まれる可能性があります。
最近では学校のカリキュラムにフォニックスが取り入れられているところもあるかもしれませんが、ない場合はやっておくと、いい英語学習のスタートが切れるでしょう。
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