イギリスの有名オークションであるサザビーズで、バンクシーの「少女と風船」が落札された直後、シュレッダーが作動して作品の下半分が切り刻まれるという事件がありました。
シュレッダーは作品の下半分を切り刻んだ状態で止まりましたが、実はバンクシーの計画では、全てが切り刻まれるはずだった⁈と思われる動画が出ました。
また、どのようにしてシュレッダーが作動したのかもよく分かっていませんでしたが、その動画ではスイッチの作動についても明らかになっているので、そのことも合わせてご紹介します。
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バンクシーの「Shred The Love事件」
2018年10月5日に、イギリスのオークションサザビースで衝撃的な事件が起こりました。
「少女と風船」というバンクシーの作品が約1億5000万円という高額で落札された直後、いきなりシュレッダーが作動して、作品の下半分が切り刻まれてしまったのです。
事件後、バンクシーは自らのインスタグラムで、自分がシュレッダーを仕込んだことを示唆する動画を投稿しました。
バンクシーは主にグラフィティと呼ばれる壁画を創作する覆面芸術家で、正体は誰なのか、はっきりとはわかっていません。ただ、「この人なのではないか」と考えられている人は数人います。
彼の正体について、詳しくはこちらの関連記事をご覧ください。
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一般的にグラフィティ・アーティストは、作品をオークションで売るために描いているのではなく、街行く人に見てもらうために描いています。なので、オークションで自分の作品を買わないでほしい、とバンクシーは語ったこともあります。
それでも彼のグラフィティはこのようにオークション売られ続けているーそんな状況に対する抗議の意味が込められているのでしょうか。バンクシーは「いつかこの絵がオークションで売られた時のために」シュレッダーを仕掛けた、とこの動画の中で言っています。
シュレッダーは誤作動したことを示唆する動画
「少女と風船」を切り刻むーディレクターズ・カット。
経歴の中にリンクあり。
本当は切り刻まれなかったと思っている人もいるが、本当に切り刻まれた。
オークション会社もグルだったと思っている人もいるが、そうではない。
そして、2018年10月17日に、新たにバンクシーによる動画が自身のYouTubeチャンネルに投稿されました。
上のインスタの投稿には「the Director's cut(ディレクターズ・カット)」と書かれていますが、YouTubeの方では、題名が「The Director's half cut」となっています。下半分が切り刻まれたことから出たジョークですね。
これを見ると、まず最初の部分はインスタで公開されたのと同じく、シュレッダーを額に埋め込んでいる様子です。
その後、オークション会場の様子が映し出されています。人々の雑談がかなりリアルに分かり、バンクシーもこの会場にいたのでは⁈と思わせます。
そして、動画の2分過ぎ、落札された直後にリモコンのスイッチを押す手が映し出されています。それによってシュレッダーが作動し始め、人々は驚き騒然とし、スタッフは慌てて作品を持ち去ります。
ということで、今まではどのようにシュレッダーが作動したか謎でしたが、おそらく会場にいたバンクシー本人がリモコンのスイッチを押して作動させたようだ、ということが分かりました。
そして動画の最後では、「リハーサルでは毎回成功していた」の言葉の後、上から下までバッサリと「少女と風船」が切り刻まれてしまいます。
どうやら、本当はこうなるはずだったのに、本番では誤作動で途中で止まってしまった…ということなのでしょう。バンクシーとしては、上から下まですっぱりと切れてしまった方が気持ちよかっただろうに、肝心の本番で失敗してしまったのですね。
ちなみに、この作品を落札した人はそのまま作品を買い取りました。この事件により、この作品の価値はより高まったと言われています。そして、すでにバンクシー作品を所有している人の中には、「私の持っているバンクシーも切り刻んだら価値が上がる?」と美術商に問い合わせる人もいるそうです…(笑)。
それにしても、オークション会場の映像は、様々な角度から撮られているので、バンクシーは一人ではなく集団という説が当たり?とも思えてきます。
または、創作をしているのは一人で、このシュレッダー事件には協力者がいるということかもしれませんね。
この事件はバンクシーの売名行為?
上で紹介したバンクシーのインスタの投稿のキャプションに、
本当は切り刻まれなかったと思っている人もいるが、本当に切り刻まれた。
オークション会社もグルだったと思っている人もいるが、そうではない。
という一節がありました。これは、この事件に関して、いろいろな説が流れているためです。
「本当は切り刻まれなかったと思っている人もいる」というのは、下から出てきている切り刻まれた部分はもともと仕込まれているダミーで、絵の本当の下の部分は額の後ろ側に移動しているだけだとか、この刃であんな風に切れるはずがない、などという説が出ました。
そして、オークション会社と手を組んでこのような事件を起こすことで、自分を宣伝しようとしたと言っている人たちもいます。
確かに衝撃的な事件で世界中でニュースになり、今までアートに興味がなかった人もバンクシーの名前を知ることになったので、売名行為だったのだとしたら大成功と言えますが…。
バンクシーは今までに権威や権力を皮肉るようなアートを発表してきましたし、商業主義に傾きアートの本質を見失っているオークションに対しては、批判的な立場を表明してきました。
なので、今回の事件は、バンクシーがこっそりとシュレッダーを仕込み、オークション会社やオークションに参加した富裕層にまんまと一矢報いた、という気がしてなりません。
まとめ
バンクシーの「少女と風船」の下半分がシュレッダーで切り刻まれた事件は、バンクシー自らが仕込んだものでした。
そして、後日公開した動画で、リハーサルではうまく作動して上から下まですっぱりと切れていたのに、本番ではおそらく誤作動で下半分だけが切れた状態になったことが分かりました。
また、どのようにシュレッダーが作動したのかについては、オークション会場にいたバンクシーが、リモコンのスイッチを押して作動させたものと思われます。
街行く人が楽しむために描いたストリートアートをオークションで売られてしまうことに対し批判的な立場をとり、アートの真価を問うゲリラ的な手法をとるバンクシーを見ていると、本当にアートとは何だろうと考えさせられます。
彼が望んでいるのは、まさにそういうことなのかもしれません。または、そんな彼に翻弄される人々を見てただ楽しんでいるだけなのかもしれませんね。
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